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手術ロボットの強化学習環境の提供
〜新しい術式の開発〜

患者さんの予後を左右する大切な医療行為の一つでもある手術。一般的に外科医が一人前と言われるまで、10年はかかると言われています。しかし、ここ近年、ロボット補助によるDa Vinci手術など、ロボットを活用した手術というのも増えてきています。また、機械学習を医療現場に導入しようという動きも活発化しています。
そこで、我々は、機械学習の研究者向けに強化学習用のシミュレーション手術環境のプラットフォームを開発し、提供しています。このプラットフォームは、現在、強化学習のタスクを複数提供しているOpenAIのGymに登録中です。このように、我々は、強化学習による新しい手術方法の開発を試みています。

ウソをつく人工知能
~セキュリティ確保とプライバシー保護のために~

医療現場での機械学習の導入において、障壁と言える問題が、「人工知能が守秘義務を守れるか」ということです。医師は、いかなる状況においても、患者のプライバシーを守る責務を担っています。近い将来、医療現場に人工知能の導入が本格化すれば、人工知能が患者を問診する日も来るかもしれません。
その際に、人工知能が患者の診療情報を共有する相手が“適切かどうかを判断”することができるかどうかが鍵となってくるのです。このような観点に基づき、我々は、人工知能が状況に応じた適切な判断を下せるような開発を進めてきました。その一環として行ったウソをつく人工知能の研究に取り組み、世界で初めて成功しました。本研究はFacebook AIリサーチが行なっていた研究をさらに進め、実際に研究者から好評価を得ました。。[pdf] 人工知能が搭載された製品を使用する人々のプライバシー保護やセキュリティーの向上を目指して、さらなる研究と開発を進めていきたいと思います。

医療用カルテの全自動化に向けた取り組み ~自分の医療情報を自分で確認~

医師のカルテ作成時間は平均3時間。 これを1時間に抑えられたら、より多くの患者を診察することが可能、丁寧な医療を提供できる、また、問題視されている医師の長時間労働等の労働問題の解決策にもなりうる。=音声データの自動化は大切ってこと。 私たちは医療カルテを自動で作成する研究を行っています。本研究の成果を元に、携帯端末から利用できるアプリQspeechを製品化しました。通常、医師が患者を診察する際の情報はカルテにまとめられます。 現在の医療現場では医師が自らコンピュータに記録する仕組みになっていますが、カルテを自動で作成することによって、医師が患者一人一人と向き合う時間が長くなり、丁寧な医療を提供できることにつながります。
また、従来のカルテは病院で管理されてきました。つまり、本来は患者本人の情報ですが、自分では確認することはできない状況になっています。 私たちが提供しているQspeechは患者一人一人が携帯端末からアクセス可能なため、自らの医療情報を確認できます。 本研究の注目ポイントは、従来までは困難だった会話の要約を実現した点です。この結果、音声データを電子化し、全自動で文章ファイルにまとめることが可能になりました。
診察時の医者と患者の会話は方向性があるため、実際にQspeechではポイントを絞って明確に記録されます。 また、本研究の成果は最先端の国際会議NIPS2016 Clinical Workshopに採択されました [pdf]

画像認識におけるモデルの可視化と説明

医師にとって嬉しいモデルとは「がんと100%認識してくれるモデル」ではなく、「がんと診断する理由は88%です。その根拠は画像の右端の部位です」だ。「なぜこのモデルは画像をがんと判定したのか?」ということを医師は慎重に考慮する。それは患者の命に直結するからだ。我々は画像認識における可視化の研究を進めてきた。医療のドメイン知識を使った「理解されやすいモデル」の研究をしています。研究の一部は人工知能学会で発表しています。

入院時の医療情報から肝臓障害の予測アルゴリズム

肝腎症候群(HRS)は、進行性肝硬変(肝機能障害)において起こる腎不全の一種です。 HRS患者の3ヶ月生存率は15%ですが、しかし現在バイオマーカー、沈降因子、および有用な予後基準はまだ発見されていません。 また、Child-Pugh分類のような肝機能との相関はないです。 幸い早期治療は効果的であり、HRSの早期予測が重要です。 この研究では、ランダムフォレストを使用して、MIMIC2公開データベースから入院時に肝硬変患者の医療記録でHRSの発症を予測しました。 その結果、予測はAUCとして0.81を達成しました。 この予測は、HRSの最初の予測であり、極めて初期の段階から行うことができます。 この研究は論文化されており、NIPS 2015 Clinical Workshopに採択されています

深層学習モデルの解釈性の可視化

良いモデルとは予測精度が高く、さらに「なぜ予測がうまく行ったか」が容易にわかるモデルです。 典型的には、医師や医学者はロジスティック回帰などの解釈可能な従来のモデルを多用してきました。 現在注目を集めている深層学習などの複雑なブラックボックスモデルを選択することは、医学者は敬遠してきました。なぜなら医学において「モデルの予測が精度よくできること」は大した問題ではなく、 本当の問題は「なぜこのモデルは精度が良いのか」と言うことの方が問題だからです。このトレードオフは、正確さと解釈可能性の両方が重要な医学における課題を提起します。 我々が作成したソフトウェアQvizは、リカレントニューラルネットワーク(RNN)を利用しつつも、「なぜこのモデルがうまく行ったのか」を可視化できるツールです。 これを使えば医師や医学者は、深層学習を利用しながらも、モデルの解釈性を失うことがありません。 我々はこのモデルの精度と解釈可能性を米国のMIMIC3というデータベースで確認しました。

ICGC-TCGA DREAM Somatic Mutation Calling - RNA Challenge (SMC-RNA)

我々はゲノムデータに特化したデータの解析手法の研究を行なっております。その一つにDream Challengeに参加しています。 直近ではがん遺伝子のFusion Gene, Isoformを予測するデータコンテストに参加しました。世界第5位の成果を収めることができました。Fusion Geneは、DNAレベルの2つの遺伝子が結合し、発癌事象に>起因する可能性がある場合に発生します。 悪性の血液学的疾患および小児肉腫において、重要な診断および予後パラメータとしてFusion Geneが増えています。遺伝子融合はすべての悪性腫瘍で起こり、 ヒトの癌罹患率の20%を占めています。これらを予測することは、がん治療において非常に重要です。

医療情報の安全管理と運営システムの構築

データは社会にとって強力な力であり、社会の質を向上させることができます。 病院は最たる例であり、医療データを集め解析をすれば、必ず患者さんに貢献できるガイドラインやモデルを作成することがで きます。 ただデータは、社会の信頼と自信を持っている場合にのみ、社会に利益をもたらすことができます。
人々は情報が安全に保管されているかよりも、誰に何のために使われているか心配しています。そのため、医療データ管理の研 究が今後必要です。
医療に関する全ての研究は、医師の力でのみ論文ができたわけではなく、患者さんと医師の間の信頼で論文はできています。 我々は医師と患者の信頼が持続的に形成されながら、データで社会を良くする社会基盤を目指し、安全で管理可能なデータベー スの研究しています。